EXHIBITION
企画展示
『地嶽祭』展 –地嶽ではぐくむ、芸術の源泉–
2022.12.14

別府とは、豊かな自然そのものであり、また豊かな人々そのものである。
豊後国の風土記にも記述がある別府は、高温の蒸気や熱湯が大地から噴出し、「地嶽」と呼ばれる自然現象をいたるところで垣間見ることができる。
そのエネルギーをもとに、豊かな温泉地が開かれ、太古から人々の身体を癒し、再生する力を持つ地だとされていた。噴煙沸き立つ幻想的な、この地に集まる人々は、天然の美しい色彩を生み出す湯源を前に、自然への驚異や畏怖と共に、大地に豊かさをもたらす神秘の力を肌で感じたに違いない。山々や海に囲まれた、その湯源の豊かさは、様々な地から訪れる旅人を受け入れ、多様な文化を生み出す礎となった。
万物に癒しを与え続け、死と再生を繰り返し、日々生命の循環を営んでいる自然のエネルギーに感謝を捧げ、あめつちの神々に豊穣を祈る。私たちの祖先が自然を崇拝し、未来永劫続けてきたこの風習を『まつり』と呼び、人類が芸術を生み出す源となった。
先人達の素晴らしい想像力によって生まれた「地嶽」の風景や温泉、人々の暮らしの中で営まれた、ものづくり。人類が太古から培ってきた自然との関係性を可視化し、別府という大地に佇む神々や祖先に、感謝と祈りを捧げる祭。
本展では、2021年に廣川玉枝が新たに創出した祭を創造するにあたり、別府をリサーチすることによって発見した魅力を共有して、過去と現在の繋がりを導き出すと共に、別府の文化・風土の可能性を示唆し、自然や人々の豊かさ、温泉の素晴らしさを再発見し、「地嶽」の未来を一緒に考える場になることを願っている。
*地嶽の表記について
高温多量の湯が湧出する別府市の鉄輪 (かんなわ) エリアでは、古くから温泉を「地獄 (じごく)」と呼んでいます。なかでも『海地獄』や『血の池地獄』など、独特の色彩・形態の温泉を周遊する『地獄めぐり』は別府市を代表する景勝地遊覧です。地球や自然のエネルギーを象徴する存在として温泉を紹介したいという作家の意図から、本展では「地獄」を一部「地嶽」として表記しています。
会 期 | 2022年12月1日(木)-2023年11月30日(木) |
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会 場 | 地獄温泉ミュージアム2Fギャラリー 〒874-0000大分県別府市鉄輪321 |
主 催 | 合資会社海地獄 |
監修・企画構成 | SOMA DESIGN |
協 力 | 株式会社ブルド/日本写真印刷コミュニケーションズ株式会社 |

Photo: SINYA KEITA (ROLLUPstudio.)
©SOMA DESIGN
SOMA DESIGN
クリエイティブディレクター/デザイナー
廣川 玉枝 / Tamae Hirokawa
2006年「SOMA DESIGN」を設立。同時にブランド「SOMARTA」を立ち上げ東京コレクションに参加。第25回毎日ファッション大賞新人賞・資生堂奨励賞受賞。単独個展「廣川玉枝展 身体の系譜」の他Canon[NEOREAL]展/ TOYOTA [iQ×SOMARTA MICROCOSMOS]展/ YAMAHA MOTOR DESIGN [02Gen-Taurs]など企業コラボレーション作品を多数手がける。
2017年SOMARTAのシグニチャーアイテム”Skin Series”がMoMAに収蔵され話題を呼ぶ。
2018年WIRED Audi INNOVATION AWARDを受賞。
2021年大分県別府市で開催される芸術祭「in BEPPU」にアーティストとして招聘され、同年12月「廣川玉枝 in BEPPU」にて市民とともに作り上げる新たな祭を発表。同年、開催された東京オリンピックの表彰台ジャケットをアシックスと共同開発した。